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ビスクドール
2010.01.12

最初に出会ったのは、まだ小学生の低学年だったと思います。
なぜなら、銀座ヨシノヤの黒いエナメルのストラップシューズを履いていましたから。
場所は、名古屋松坂屋だったと思うのですが、駅前だったのか、栄だったのか。
いいえ、お買い物のルートから察すると、名鉄メルサくらいでしょうか(笑)
あの日も、いつものように父と母、そして妹と名古屋のデパートに出かけていました。
お揃いのワンピースに、黒いエナメルの靴。
母は自分の靴や、私たち姉妹の服、父の背広の生地を一通り見終えていて、父は、あいかわらず、自分も同じということを、棚の最上段に上げ、日曜の名古屋の人出の多さをあれこれ言いながら、うんざりした様子でした。
母と父に手ををひかれて行く間も、母は父にお構い無しに、慣れた様子であちらこちらのお店に寄り道します。
その途中に、催し会場があって、柱のようにレイアウトされたショーウィンドウには、見たことも無い、出会ったことも無いような、美しいお人形が飾られていました。
透き通った瞳のそのお人形達は、手をちょっと開き加減にし、小首を傾げて、私の方を見返してきます。
「ジュモー」たしか、そう書かれていて、ガラスに頬をくっつけるようにしてみたのを覚えています。
私のまだ2歳の頃の、ちょっと色あせた写真を見ると、
おかっぱ頭でにんまり笑う私の背中には、いつも母手作りのお人形が背負われています。
お人形が大好きだった小さい女の子は、「いつか、こんなお人形が欲しい」と思いながら、
百貨店のウィンドウを眺めていました。
アンティークだったと知るのは、ずっと、ずっと後のことですが、
もの心付いたころからのお人形は、残っているものはみな、一緒にお嫁入りし、一緒にお引越ししました。
私が、ブルーのワンピースに黒い靴で、足の痛みも忘れて見たのとよく似たお人形は、
今、わたしのお気に入りの作家の方に、少しずつ作っていただいています。
今年は、娘をイメージしたお人形を、その方は、新年早々から作って下さっていますが、
「いつか、娘もそのお人形を持って、お嫁に行く日が来るのかしら・・」と、ふと考えるこのごろです(笑)