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伯父のこと
2013.12.11
亡くなった主人の伯父は、気骨のある人でした。子供がいないから、主人のことを、実の子のように、伯母と二人で愛してくれていました。 私がであった頃はもう、警察の仕事を退かれ、伯母と二人で小さな家に、畑と花を作って住んでいました。 伯父が、長い年月の間にわたしたちに、ぽつり、ぽつりと話してくれたことは、いま思い出しても、切なくて胸が締め付けられます。 伯母とふたり、満州にいて、引き上げる時、命からがら逃げ出して、やっとの思いで船に乗り、長い時間かけて日本の港に着いた。まだほんの幼子だった我が子が、長旅で熱を出し、医者にと言ったけれど、手続きが済んでいないからと、陸にあげてくれなかった。そうして子供は、船の中で亡くなった。 満州では、兵隊に出た。機銃で敵を殺した。殺さなかったら、殺される。他に選択肢は無かった。今でも、殺した相手の夢を見る。 優しかった伯父は、わたしの庭の花の世話や、時には大きな噴霧器を持って、消毒をしてくれました。 わしは、長生きできへんよ。と、笑いながら、90を裕に過ぎるまで生きました。 今、日本がまた、かつての日本に戻ろうとしている今、伯父のことを、今まで以上に思い出します。まずは、秘密を保持する法律で、国民に国のさまざまを曖昧にし、何か言おうとすればスパイと決めて拘束し、次にまた憲法を改正して、子供たちを戦争に送り出す。 90を過ぎても、我が手で人を殺めたことに傷ついて夢に見て、眠れなかった伯父。自分の子供たちに、そんな日本を望みますか?わたしはいまも、自民党は反対ですし、安倍首相のあのどろんと濁って、何かが憑いたような顔を見ると、ぞっとするのです。
